2025年開催の第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館における展示「中立展(In-Between)」に、テクニカルエンジニアとしてイトウが参加いたしました。

キュレーター・ステイトメント:

私たちはついつい、私たちを取り囲む環境を操作が可能な対象として捉えてしまいがちです。しかし、その認識こそが気候危機を引き起こしている元凶ではないでしょうか?

私たちは、気候危機を解決すべく、最大限の努力をもって、技術を進化させていく必要があります。しかし、それだけでは、気候危機を根本的なところでは解決することはできないでしょう。とはいえ、その一方で、技術を捨てて自然に回帰するというのも現実的な選択ではありません。

私たちに今必要なのは、私たちを取り囲む環境に対して、それを操作できるという認識とその逆にそれは操作できないという認識の、私たちは進む道の両側にあるどちらの陥穽にも転落しない第三の「知性」を持つことであると考えます。

操作は、操作する側と操作される側の、つまり主客の二分を前提としています。それゆえに、まず私たちは、主客分化をなくした地平に立ってみることから、思考実験を始めました。

日本には「間」という観念の歴史があります。「間」は、もともとは、日常的な意味での「あいだ」である以上に、2つの事物の応答(対話)が孕むテンションであり、そのテンションのふるまいがひとつの虚なる主体として機能するという観念でした。その観念からすれば、主体は、私たち人間かその外部世界のいずれかにあるのではなく、私たち人間でもその外部世界でもない、第三の次元にある世界–中立点-のなかにあるということになるでしょう。

中立点とは、人間も非人間も、自然も人工も区別なく、それらの応答(対話)の状況そのものであり、そこに身を投じるということなのです。

こうした知性を模索する試みとして、私たちは日本館の建物自体をとりあげることにしました。日本館を構成している事物-Hole(穴)、Wall Columns(柱)、Outer Walls(壁)、Brick Terrace(煉瓦テラス)、Pensilina(階段庇)、Tilted Loop Path(動線リング)、Yew Tree(イチイの木) -が対話、つまり情報の交換をはじめ、そこに人間がそれらと同等の存在として加わって、日本館のあり方について「話し合う」ようになる、そんな AI 技術が進んだ、少し先の未来の状況を描くことにしました。

青木 淳

Link: ヴェネチア・ビエンナーレ日本館 公式サイト

©Asako Fujikura + Takahiro Ohmura
©Asako Fujikura + Takahiro Ohmura
©SUNAKI Inc.
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第 19 回 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 全体概要
会期:2025 年 5 月 10 日(土)~11 月 23 日(日)
会場:ジャルディーニ地区(Giardini)、アルセナーレ地区(Arsenale)、他ヴェネチア市内各所
総合ディレクター:Carlo Ratti
総合テーマ:Intelligens. Natural. Artificial. Collective.
公式ウェブサイト:https://www.labiennale.org/en

主催/コミッショナー:国際交流基金
キュレーター:青木 淳(建築家、AS Co. Ltd.代表)
キュラトリアル・アドバイザー:家村珠代(インディペンデントキュレーター、多摩美術大学教授)
出展作家:藤倉麻子+大村高広
砂木 [木内俊克&砂山太一]
作曲・サウンドデザイン:ermhoi
音響・サウンドデザイン:大城 真
テクニカルエンジニア:イトウユウヤ
プロジェクトマネージメント:品川知子、町田祐子、岩瀬悠希子
展示アシスタント:荒木澄海、伊藤道史、加藤雄大、好田一生、松本 悠、斎藤悠太、角 太陽
グラフィックデザイン:若林亜希子
エディター:網野奈央
制作:alcarol [アンドレア・フォルティ&エレノア・ダル・ファラ](鏡面大皿)
バルナ・ゲルゲイ・ペーター(土レール)
撮影制作:KAORU[Kaoru Mitsui] (フードスタイリスト)、荻ありす(フード助手)、青木理紗(撮影監督)、
小澤秀馬(撮影・カラリスト)、鈴木晴海(撮影助手)、藤井貴浩(照明)、成毛紗恵子(照明助手)、
石田剛志(照明助手)、神崎えり(プロダクションマネジメント)、上地可紗(ヘアメイクスタイリスト)、
しんやさとこ(スタイリング)、稲永英俊(プロップ施工)
CG 制作アシスタント:池田愛(レンダリングコーディネーター)、二郷みき(モーションデザイン)
構造エンジニア:木村友美
タイトルフォント:タリク・ハイブア
現地コーディネーター:武藤春美
出演:鬼久保紀恵、森田秀二、太田琢人、アリソン理恵、阿野恭子
声の出演:ケヴィン・マキュー、森田絵奈、森田秀二、ジュリア・ショートリード、ジュア、ヒミ、ermhoi
演奏:亀井友莉(1st Vn)、石井智大(2nd Vn)、三品芽生(Viola)、村岡苑子(Vc)、
マーティ・ホロベック(Double Bass)、タイキメン(Marimba)
制作アシスタント:水谷泰平、中原稜将、西頭慶恭、山口遼太郎、荒木颯太(土レール)

特別助成:公益財団法人石橋財団
協賛:大成建設株式会社、株式会社竹中工務店、鹿島建設株式会社、公益財団法人大林財団、
YKK AP 株式会社、三和ファサード・ラボ株式会社
田中 仁、福武英明、石川康晴、神原勝成、森 佳子、青井 茂、木野瀬祐太、Rina Matsuda、
Miyuki Mizuno、酒井宏彰、高橋隆史、宅間理了、牧 寛之、石井孝之、小山登美夫、那須太郎、
菊竹 寛、額賀古太郎、平川紀道、鬼頭健吾、真鍋大度、蜷川実花、竹村 京
特別協力:カラー
協力:デルタ電子株式会社、株式会社日本 HP、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab